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2012年の夏に公開された映画「あなたへ」は、主役・高倉健を筆頭に非常に豪華なキャストがそろっています。公開直後から高い人気を誇った本作は、国内で観客動員数2位の功績を収めました。また、モントリオール世界映画祭ではエキュメニカル賞特別賞を受賞するなど、海外からも高い評価を受ける作品となりました。 「あなたへ」は、今は亡き妻の洋子(田中裕子)と、妻が残したメッセージの意味を見つける旅に出る英二(高倉健)のやさしさ溢れる物語です。

監督:降旗康男、脚本:青島武、音楽:林祐介、出演:高倉健 佐藤浩市 田中裕子 草彅剛 余貴美子 綾瀬はるか

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亡き妻への愛情と妻が天国から送る愛

刑務所に勤務する英二(高倉健)のもとに、亡き妻からの手紙が届きます。そこに書かれていたのは「私の骨をふるさとの海に散骨してください」というもの。その意図が分からなかった英二は、妻が抱える希望の真意を知るため、故郷へと向かう旅をはじめます。富山県から飛騨高山へ、そして京都、瀬戸内、北九州から、亡き妻の故郷である長崎県平戸市の漁港へと車を走らせるのです。

ながい放浪の旅の途中で、英二はさまざまな出会いを経験します。大阪では、車の故障で身動きがとれない田宮裕司(草彅剛)に助けを求められ、車の修理にくわえて実演販売用のいかめし作りを手伝います。田宮の仕事が終わってから、田宮の部下である南原慎一(佐藤浩市)という複雑な事情を抱える男との出会いがあります。

妻と子を養うため、保険金のために「死んだことになっている」と南原は打ち明けました。洋子の故郷、平戸出身であると語った南原は、「平戸で困ったときはこの人に」と、英二に大浦吾郎(大滝秀治)の連絡先を教えます。英二は、この南原との出会いがなければ、洋子の散骨してほしいという願いを叶えることはできなかったでしょう。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=SR7sMnwaVRQ

人と人との繋がりが紡ぐストーリー

数々の出会いの果てにたどり着いた平戸でも、やはり人と人とのつながりは絶えることがありません。散骨するための船を出してもらうよう漁師に頼みますが、ことごとく断られてしまいます。

大阪で出会った南原の知り合いである大浦からも拒否され途方に暮れるころ、食堂を営む家族の濱崎多恵子(余貴美子)と、その娘である奈緒子(綾瀬はるか)に出会います。暴風雨に晒される車で休もうとするとき、奈緒子が「人の親切は受けるように」と、自宅に泊まるよう促します。雨風で戸が音を立てるなか、多恵子は英二に海で行方不明になった夫のことを語ります。

洋子の散骨に迷いがあること、その意図が分からないことを英二が告白すると、多恵子は「夫婦だからってなんでもわかるわけじゃない。ここに来たってことだけでいいんじゃないですか」と話し、その言葉が英二の胸に響くのです。 激しい風と雨が港にとどまるなか、やはり散骨はせねばと決心した英二は、大浦吾郎のもとへもう一度足を運びます。すると大浦は承諾し、散骨のために船を出してくれることになったのです。翌朝は、夜の雨が嘘のような清々しい空と海でした。

運命の出会いと感動のラスト

英二と洋子の出会いは、英二が務める刑務所内に童謡歌手として洋子が訪れたときのことでした。刑務所慰問をしていた洋子は、所内で「星めぐりの歌」を歌います。その場にいた英二は、洋子の歌声に惹かれていくのを感じるのです。

刑務所近くのバス停で佇む洋子を見かけた英二は、そのもとに駆け寄り声をかけます。故郷を思い出しながら聞いていました、と告げた後ろ姿を引き留めた洋子は、「たった一人のために歌っていたんです」と亡くなった受刑者のことを語りました。

洋子と英二の2人の過去は、すべて回想シーンで物語られています。旅の途中、あらゆることをきっかけに、妻との初々しい記憶や忘れかけていた思い出を、再び胸に呼び起こすのです。

大浦の好意で無事に海へ船を出してもらえることになった英二は、奈々子から花束を受け取ります。手のなかに眠る亡き妻を海へ還すと、受け取った花もいっしょに流し、妻への想いを込めて手を合わせます。洋子の願いを叶えた英二は、平戸へもどると、南原に感謝を伝えるため再び会うことを約束します。

英二は南原に散骨が終わったことを報告すると、食堂で出会った多恵子の話をして、1枚の写真を見せます。そこにうつる女性は、南原の妻だったのです。英二は南原に語ります。「刑務所では、人に情報を流すことを鳩を飛ばすと言います。自分は今日、鳩になりました。」

英二は、洋子からの手紙をきっかけに人と出会い、その温もりに触れ、放浪と旅の違いについて考えたり、思わぬ出来事に驚いたりするのです。妻を愛してきた英二が知らない世界がそこにはたくさんありました。そしてその旅を通して、自分に対する妻の溢れんばかりの愛情をもう一度感じることができたのです。

洋子の歌声と宮沢賢治の詩

洋子(田中裕子)の歌声に一目惚れさせられるのは、英二だけではありません。2人の物語を追う私たちをも魅了してしまうのです。透き通った、という表現とは少し違う、洋子という1人の人生をあらわしていうような綺麗さと表現力があります。

その声に透明感をより強く与えているのは、「星めぐりの歌」という宮沢賢治の詩です。赤い目玉のさそり、広げたワシの翼・・・。宮沢賢治は言葉で、そして歌で世界をまわります。洋子はこの言葉をかりて、その美しい声で英二と私たちを虜にしてしまうのです。

感想 : 大滝秀治の遺作、そして豪華俳優陣

2012年に公開されたこの作品は、約2年後にこの世を去った高倉健最後の主演作品となりました。本作を含め、出演映画の数は205本にものぼり、「あなたへ」は2006年以来の主演作品でもありました。

また、1949年に初舞台を踏んでから役者人生を全うした大滝秀治の遺作でもあります。映画公開から2か月経たずしての訃報だったため、多くの人が衝撃をうけたことでしょう。「久しぶりにきれいな海ば見た」というセリフひとつで、改めて存在そのものの偉大さを感じさせられたのです。

さらに、ビートたけしは日本中を放浪する種田山頭火好きの杉野として存在感を放っています。「放浪と旅の違いは、松尾芭蕉か山頭火だ」と言い、山頭火を諳んじる不思議な男です。後に警察官に逮捕され、実は車上荒らし犯だったのだと知った英二を驚かせるという自由っぷりを発揮しています。

あなたへの作品情報

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レンタル開始日/公開日
2013/03/08
監督
降旗康男
キャスト
高倉健 佐藤浩市 田中裕子 草彅剛 余貴美子 綾瀬はるか
上映時間
111分
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あなたへのユーザ評価

評価数:2145件
評価 :★★★☆☆(3.4/5)

クチコユーザの評価・ネタバレ
  • 大掛かりなアクションやCGの多用される洋画と異なり、邦画は映画館のスクリーンで観る価値を感じないものが多い。しかし、この作品は是非大きなスクリーンで味わいたいと思った作品。柔らかで美しい映像で人と人のつながりや家族への愛情が描かれる。細部まで繊細で緻密で、日本人らしい邦画らしい素晴らしい作品だった。高倉健さんを始め、キャストの表現力は秀逸の一言。仕草や物腰で登場人物それぞれの心の機微を丁寧に描いている。
  • 主人公が、富山から亡き妻の故郷、長崎まで散骨の旅に出るロードムービー。 高倉健の演技をどうこう言うつもりはない。我々の世代、健さんや菅原文太 なんかは、その存在自体にオーラを感じてしまう。出ている俳優の顔ぶれか らもっと重くしい感じの作品かと思ったが、重からず軽からずのいい感じに 仕上げてあると思う。ビートたけし、草なぎ剛とのエピソードの挿入が功を 奏していると思うのだが、話としてはラストの佐藤浩市の打ち明け話が印象 的だった。ちょっと都合良すぎる脚本だが(笑) そして、大好きな綾瀬はる かちゃんは、この作品でもいい田舎っぺぶり。感動作品というより、昔なが らの日本映画という感じでジワジワっと味わう良作です。
  • 降旗康男の映画は、カモメの鳴き声が良く似合う。 ロード・ムーヴィーの行きつくところは、港町。それも平戸の中心部 からほんの少し離れたところにある西側の薄香という小さい漁港が 舞台となる。いいロケーションだ。 高倉健が、妻を愛するピュアな老人という役柄で、健在だった。 ただ、さすがに年を取った。刑務官を退職後、嘱託として刑務所で 技官を務めているという設定だが、嘱託だとしても、少々無理があるか。 妻役の田中裕子とも、実年齢は24歳差である。 他のキャストでは同僚刑務官の、長塚京三とその妻・原田美枝子。 旅の途中で知り合う、ビートたけし、草なぎ剛、佐藤浩市。 薄香で迎える、大滝秀治、余貴美子、三浦貴大、綾瀬はるか。 何と豪華な顔ぶれだろう。

参考URL
・youtube.com