インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌のジャケット写真

まだマスコミもレコード会社も成長途上にあった1960年代。ニューヨークにあるグリニッチ・ヴィレッジのミュージック・シーンは活気に満ちていた。シンガー・ソングライターのルーウィン(オスカー・アイザック)はここのライブハウスで歌い続けているが、なかなか売れず、音楽で食べていくことを諦めようかとの思いが頭に浮かぶこともある。それでも友人たちの力を借りながら暮らす彼の1週間を綴る。

監督:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン、脚本:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン、音楽:T・ボーン・バーネット、出演:オスカー・アイザック キャリー・マリガン ジョン・グッドマン ギャレット・ヘドランド

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ルーウィン・デイヴィスの災難

1960年代初頭のニューヨーク。フォークシンガーのルーウィン・デイヴィスは、才能はあるもののなかなか芽が出ずにいた。以前はデュオとしてレコードも出していたが、事情があって今はソロ活動。だがソロのレコードも売れず、懐は無一文というありさまだった。しかもクラブ出演後には知らない男に殴られるなど、さんざんな目にあってばかり。宿無しのルーウィンは、昨日も知り合いの大学教授のアパートに泊まり、朝方出ていこうとしていた。

すると、開けたドアの隙間から飼い猫が飛び出てしまう。慌てて部屋に戻そうとするが、オートロックの扉は開かない。家人は出払っているため、仕方なく猫を連れて街を移動することになる。ルーウィンが向かった先は、元恋人のジーンの部屋だった。ジーンもまたフォーク歌手で、今はジムというイケメンとデュオを組んでいた。ルーウィンを出迎えたジーンは、「あんたのせいで妊娠した」と、彼をけちょんけちょんにこきおろす(あまりにひどいので笑えるほど)。それでも家には泊めてくれたものの、ここでも窓の隙間から猫に逃げられてしまう。

ルーウィンは子供をおろしたいというジーンのために、医者を紹介し、金も作ると請け合う。しかし、もちろんそんな金など持っていない。姉のところへ無心に行くが、先に予防線を張られ貸してもらえない。ルーウィンは猫のことで大学教授のゴーファインに電話を入れると、ジムからレコーディングの誘いの電話があったという。渡りに船とばかり、ルーウィンは喜び勇んでコロンビアレコードへ向かうのだった。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=8wV7Lq2c9gY

再び猫を連れて

レコーディングするのは、ジムが作ったコミカルな曲だった。ルーウィンはギターとコーラスを手伝うと、早速ギャラをもらう。おまけに同じレコーディングに参加していたアルという男に頼んで、数日泊めてもらうことに。そこでアルが言うには、知り合いが車でシカゴに行くのだが、ガソリン代を折半してくれる連れを探しているという。ルーウィンはシカゴのプロモーター:バド・グロスマンの噂を聞いていたことから、その話をOKする。

預けていた荷物を取りに行こうとジーンに連絡すると、ジーンは「近くの喫茶店に持っていく」とのこと。店で落ち合ったルーウィンは、彼女に堕胎の件について説明するが、「あんたには計画性も将来性もない」とここでもキツイ説教をくらってしまう。それでもジーンは、彼女なりに彼を心配しているのだった。

と、そこでルーウィンは、逃げた猫が通りを歩いているのを発見。ようやく猫を保護すると、ゴーファイン家へ連れて行く。ゴーファイン夫妻はルーウィンを温かく迎え入れるが、夕食の席でせがまれた彼が歌い出した時、騒動が起こる。妻のリリアンが元相棒のパートを歌い始めたことで、ルーウィンが怒ったのだ。元相棒には苦い思い出があり、それが彼には耐えられなかった。

気まずくなったルーウィンが出ていこうとすると、リリアンの叫び声が。ルーウィンが連れて来た猫は、まったく別の猫だったのだ。結局、ルーウィンはまたしても猫を連れて彷徨することになるのだった。

シカゴへの旅

シカゴへ行く男たちというのは、とんでもなく無礼な巨漢(ローランド)と、恐ろしく無口な男(ジョニー)だった。ここから彼らの車に乗り込んだルーウィンの奇妙な旅が始まる。ローランドは寝ているか悪態をついているかのどっちかで、ジョニーはひたすら何もしゃべらない。

途中、ローランドから元相棒のことを尋ねられたルーウィンは、「橋から身を投げた」とぶっきらぼうに答える。またしてもローランドが失礼な皮肉を言ったことで、2人の空気は険悪になる。旅の途中、立ち寄った食堂のトイレで、ローランドが突然意識を失って倒れる。しかしジョニーは慌てず彼を車へ引きずり込むと、何事もないかのように旅を続けるのだった。その夜ジョニーが車を道端に止めて仮眠していると、警官が現れて注意される。ジョニーは反抗したことで逮捕され、署へ連行されてしまう。しかも、車のキーを持ったまま。

意識のない巨漢と猫と共に置き去りにされたルーウィンは、仕方なく彼らを残し、シカゴまでヒッチハイクすることに。さんざん苦労した挙句、ようやくたどり着いたシカゴ。ルーウィンはグロスマンのオフィスに向かうと、彼の前で持ち歌を披露する。しかし返ってきた答えは、「金の匂いがしない」という至極あっさりしたものだった。結局、何の成果もなくルーウィンは、再びNYへの帰路につく。

ユリシーズの帰還

なんとかNYへ帰ってきたルーウィンは、浮草生活に疲れ果て、一度船員として落ち着こうと考える。しかし組合費の滞納のため、船には乗れないと断られてしまう。仕方なくなけなしの金をはたいて滞納分を埋め、乗船予約を取るルーウィン。ところが船員免許を取りに実家の姉を尋ねると、何と免許を入れておいた箱を捨ててしまったという。

しかも免許の再発行には、またまた金がいるとのこと。もはや完全に無一文のルーウィンは、にっちもさっちもいかなくなった。だがジーンのはからいで、もう一度クラブ「ガスライト」で歌わせてもらえることになる。ガスライトを訪れたルーウィンが聞かされたのは、ジーンはルーウィンがステージに出させてもらえるようオーナーに自分の体を提供したという事実だった。気分が荒れたルーウィンは、思わずその時歌っていた女性にキツいヤジを飛ばしてしまう。店を追い出されたルーウィンが向かったのはゴーファイン家だったが、彼らはまたしても温かく迎えてくれる。

すると、行方不明だったあの猫が戻っていた。しかもその名を聞くと、「ユリシーズ」だという(ユリシーズはギリシャ神話の英雄オデュッセウスのことで、長い遍歴を重ねたことで知られる)。翌日ガスライトに出演したルーウィンは、直後に知らない男に呼び出される。昨日ルーウィンがヤジを飛ばした女性の夫だという男は、ルーウィンを手ひどくなぐりつける。こうしてルーウィンの受難は、いつ終わるともなく続くのだった。一方その頃、店では「ボブ・ディラン」と名乗る若きシンガーの歌声が、高らかに響いていた。

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌の作品情報

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌のジャケット写真
レンタル開始日
2014/12/17
監督
ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
キャスト
オスカー・アイザック キャリー・マリガン ジョン・グッドマン
上映時間
105分
GEOで購入!
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌のユーザ評価

評価数:492件
評価 :★★★☆☆(3.4/5)

クチコユーザの評価・ネタバレ
  • ダメ男のゆるーい日常を描いた映画。オスカー・アイザックは歌手でもあるんですね。ハスキーボイスが曲にあって、耳心地良い。癒し系の映画です。猫が可愛い。
  • これぞ、唄うたい。フォークソングの夜明け前、先行きは不透明、ギターと猫を両手に抱え、名もない男の「呻き声」がしみじみと響きます。オスカーアイザックの歌声、コーエン兄弟の脚本の上手さに、思わず舌を巻くこと間違いなし。
  • 実に良かった。 まずは冒頭の「ハング・ミー・・・」が、非常に浸みる。フォークソングとは言っても、どちらかというと叙事詩の分野だなと思わせる。そしてこれがラストへと繋がり、猫の名前から「オデッセイア」のパロディだと気づかされる。 エンドロールへと流れる場面では、ディランの弾き語りが遠巻きに描かれ、その後やがて「神」の如くの大スターとなる人間が次の潮流を作っている。主人公はその潮に「名も無く」流されてしまうのだろう。 60年代初頭の、宿無しのうらぶれたフォークシンガーが主人公だが、その宿流れの生活がユーモラスに描かれ、中間部はロード・ムービーとなり、そして結局は冒頭へと帰結する。そしてディラン。 猫の使い方が実にいい。時に相棒であり、時には主人公自身であったりする。カメラが、それぞれの場面で、この猫の表情を抜群のセンスで撮っている。

参考URL
・youtube.com