2009年に公開された「ハゲタカ」は、金融の世界を生々しく描き出しただけでなく、当時の社会問題が上手くプロットされた作品として話題になりました。しばしばニュースでも話題になる企業買収、その裏側で行われる巨額の金と人間心理を突いた戦いの全貌を垣間見れる映画です。

ここからネタバレ!閲覧にはご注意ください!

スタッフ・キャスト

監督:大友啓史
原作:真山仁
脚本:林宏司
音楽:佐藤直紀、出演:大森南朋 玉山鉄二 栗山千明 高良健吾

金ですべてが決まるわけではない

外資による企業買収というこれまでのテレビドラマで取り上げられることのなかったテーマに挑み、2007年の放映では高視聴率を上げ国内の様々な賞を受賞したNHKドラマ「ハゲタカ」。

ドラマでは「ホライズン・インベストメント・ワークス」というアメリカの投資ファンド日本代表の鷲津政彦を中心に物語が展開されていきましたが、映画では彼に対抗する形で中国政府系ファンド「ブルー・ウォール・パートナーズ」代表劉一華が登場し、彼を中心にストーリーが展開。映画版ではテレビドラマのその後として、ドラマのエンディングから四年後を舞台にストーリーが展開されていきます。

公開時は「リーマンショック」から一年経っていなかったこともあり、その当時の経済状況をうまく取り込んだ形でスリリングな展開を見せます。

大きなハゲタカは強い

鷲津が率いたファンドは経営体力の弱った企業を買収し、健全経営に立て直した上で高値で売却するという手法で、言わば金目的なことが明白ですが、劉一華の率いる中国資本のファンドはこれとは全く違う目的で行動します。それは日本企業の技術やノウハウ、ブランド力を手に入れるために、金に糸目を付けずに企業を買収するという目的です。

この二つのファンドの違いを対比させて見て行くと、この映画は色々なことを観ている者に伝えてきます。しかも劉のファンドは総資産80兆円で、日本の国家予算並みの莫大な資金を使って力技で買収を仕掛けてきます。ここまで来ると買えないものはこの世にないかのように見えてきます。

ドラマでは企業が持っている特許や人材などの資産を細かく査定して上で、買収額を練り上げていくエピソードがありましたが、映画では鷲津の株式公開買い付け額を劉のファンドが簡単に上回って、企業価値を度外視した買収を展開します。それは日本企業の”ブランド力”という金では買えないものを手に入れようとしているからです。

そしてもう一つ、中国政府に負けは許されないというメンツが掛かっているからです。ここまで来ると企業買収という経済行為を超えた話になってきて、あまりの強さに中盤笑ってしまうくらいです。

大きなハゲタカは強い

札束で人をひっぱたくようなやり方で勝利したかに見えた中国国家ファンドですが、金だけに頼った手法はもっと大きな金に負けてしまいます。

鷲津がアラブ資本を引き込んで、中国ファンドの母体である投資銀行を買収に掛かって逆襲します。

目的企業にだけ目を向けて資金投資をしてきた劉達の脇の甘さを突いた形で仕掛けを展開していく場面は爽快感すら漂わせます。金だけを武器にしてきたものが戦略を練ってきたものにうろたえる様は現実経済を見ているかのようです。

誰のための何のための企業買収なのか?

テレビドラマが描いてきた鷲津の企業買収は、表面上は弱った企業を買い叩いて不採算部門を切り捨てた上で売却する、「しがらみだらけの日本企業にはできない外科手術をする」というものしたが、実はエピソードの一つ一つに何故その企業が弱ってしまったのか?、誰が弱っていく企業を放置したのか?、企業が弱っていくように食い物にしてきたのはどの業界なのか?を丹念に描いています。

最後には鷲津は死肉を食い漁るハゲタカではなくて、死に体の企業を蘇らせる正義なのではないかと感じる場面が多くありました。しかし、映画の中国ファンドは買収される企業の誰一人救うことを考えていない本物のハゲタカに思えました。日本企業の技術を手に入れたら日本国内の工場をすべて閉鎖にしてしまおうと考えるあたりに彼らの怖さがあります。

結果的に鷲津たちが金に頼った劉に勝つのですが、そこに金だけではない企業買収の大義を持つ者とそうでない者との違いを感じました。ラストでは劉本人は決して金だけが目的で買収に動いたわけではないことが明らかになりますが、どんな行動であれ大義や正義を持たないもののもろさをこの映画は証明してくれているような気がしました。

ハゲタカの作品情報

ハゲタカのジャケット写真

レンタル開始日
2009/06/06
監督
大友啓史
キャスト
大森南朋(鷲津政彦)、玉山鉄二(劉一華)、栗山千明(三島由香)、高良健吾(守山翔)、遠藤憲一(古谷隆史)、松田龍平(西野治)
上映時間
134分
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ハゲタカのユーザ評価

評価数:669件
評価 :★★★☆☆(3.6/5)

クチコユーザの評価・ネタバレ
  • 企業買収については無知だが、ハゲタカの買収劇は楽しめる!自分の想像越える面白さがあることがわかった。
    素人にもオススメ!
  • 中国系の投資ファンドが日本の基幹産業である大手自動車の買収に乗り出して、主人公がホワイトナイトとして対立するという。

     渋い表情の役者さんたちが背広バシッと着こなして情報戦をするのは見ててカッコよくて面白かったです。それにサブプライム問題や派遣労働者問題を絡ませて、それぞれの企業を追い込む設定として取り込んでるのが面白かったです。
     
     ただ、連続ドラマを見ていないので、それぞれのキャラクターの背景が説明がないためちょっとついていけない部分もありました。特に松田龍平さんとかは何のキャラクターだったのか謎でした。
     それに主人公側が相手にやられにやられて最後に逆転するというカタルシスがあんまりなくて、中盤以降は相手側の自爆っぷりがすごいのと。主人公が特に何もしないという。主人公の部下が海外で相手の情報を持ってこなければ勝てなかったんではなかろうか? と思ってしまいました。確かに主人公の考えではあるけど実行してるのは周りの人たち。
     それとこの映画の真の主人公である玉山鉄二さん演じる男の退場っぷりは、あまりに突然すぎて笑ってしまうという。

     経済の話とかをわかりやすく解説して紹介しているという映画ではありますが、もっとエンタメとして振り切って熱い展開が見たかった映画でした。

  • TV版の最終話は、日本の電気メーカーが、鷲津ファンドにより海外資本の買収から守られ終りましたが、今回の映画版は、日本の自動車メーカーが中国資本に狙われる話です。
    TV版のキャストはほぼそのままの形で出てきます。
    アメリカの証券会社の破綻や、アラブ資本の台頭、日本の派遣切りもストーリー展開のポイントになっています。
    テンポも良く、まとめ方も的確です。
    中国によるIBM買収は一部PC事業だけでしたが、勢いを増す中国資本が世界に君臨するのはもう間近なのかもしれません。
    文化の中心が、明らかにアメリカから西に向かって移りつつあると画面は伝えているようです。
    それだけに、船頭のいない日本の行き先は、深い霧の中を彷徨うような気がします。

TV版「ハゲタカ」も見ておこう!

ハゲタカはTVドラマが大ヒットした後に映画化された作品。なので、映画版のエッセンスはTVドラマゆずりです。あわせてご覧いただくと、フムフムなるほど!と理解が深まるはずですよ!

ハゲタカ(ドラマ)の作品情報

ハゲタカ(ドラマ)のジャケット写真

レンタル開始日
2007/07/04
原作
真山仁
キャスト
大森南朋、松田龍平、栗山千明、柴田恭兵
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ハゲタカ(ドラマ)のユーザ評価

評価数:525件
評価 :★★★☆☆(3.8/5)

クチコユーザの評価・ネタバレ
  • 人気度外視で集められた実力派俳優陣と、秀逸な脚本がたまらん。不況にあえぐ瀕死の日本企業と、死肉に群がるハゲタカのように日本企業を狙う外資ファンドという構図から始まる。
  • 大森南朋演ずるところの鷲津政彦がどうしようもなくクールでかっこよくって、一度にファンになってしまいました。また鷲津政彦のしてるメガネもかっこよくってほしくってNETで調べました。「鷲頭 メガネ」で出てくるから凄い!物語りとしても面白かったです。
  • 完成度の高い大人のドラマを多数輩出した「NHK土曜ドラマ」のヒット作品『ハゲタカ』です。「企業買収」ビジネスを扱う経済ドラマでありながらも、それを取り巻く人間模様と葛藤が描かれ、じっくり見れる骨太な大人のドラマが見ごたえがありました。

参考URL
・youtube.com