劔岳 点の記のジャケット写真

日本の地図を完成させるため、命を賭けて前人未到の雪山へ挑んだ男たちを描く実話をもとにした物語。原作は新田次郎の小説であり、これまで「八甲田山」「復活の日」「駅 STATION」などを撮影してきた伝説的キャメラマン木村大作が自身で企画を立ち上げて、初めてメガホンをとった。

監督:木村大作、原作:新田次郎、脚本:木村大作 菊池淳夫 宮村敏正、出演:浅野忠信 香川照之 松田龍平 モロ師岡

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最後の空白地点「越中劒岳」

点の記とは、地図を作るための基準である三角点を記録したものです。現在三角点の数は全国で10万6千に上りますが、「剱岳点の記」は地図作りに命を懸けた測量士たちの物語です。

時は明治39年、日本は日露戦争で大国ロシアに勝利しましたが、未だロシアは朝鮮半島を狙っていました。陸軍上層部は、国防のためにも詳細な日本地図が必要だと考えました。当時の日本地図には、最後の空白地点と言われる場所がありました。それが前人未到の山、越中劒岳です。

なんとしても空白地点を埋めたい陸軍上層部の意向をかなえるべく、剱岳登頂を命じられたのが当時の陸軍省参謀本部の1つ陸地測量部(今の国土地理院)に所属する測量手・柴崎(浅野忠信)でした。

また、時期を同じくして、剱岳登頂を目指す人たちがいました。それが日本初の民間による山岳組織「日本山岳会」です。彼らは海外の測量技術や登山技術を取り入れ、幾多の山を制覇していました。陸軍上層部は陸軍の威信にかけて「陸地測量部による剱岳初登頂」を厳命しました。

※名もなき測量手たちによって作られる日本地図、淡々と仕事に従事していく柴崎役の浅野忠信さんが意外に似合っています。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=8g7whsbBZf4

立山曼荼羅の修験道

任務遂行を言い渡された柴崎は、過去に「二等三角點ノ記」を記した陸地測量部の先輩測量手である古田(役所広司)を訪れます。

剱岳登頂のためには、優秀な山案内人が必要だと判断した柴崎は、古田にその人を紹介してもらいたかったのです。柴崎の訪問と願いに古田は快く応じ、宇治長次郎(香川照之)を紹介してくれました。

そして剱岳測量の下見に訪れた柴崎を、長次郎は富山駅で迎えます。長次郎の家に案内された柴崎は、長次郎が描いた剱岳の詳細なデッサンに見入ります。細部に至るまで細かく書かれたデッサンはさすがの代物――柴崎は驚くと共に安堵感を覚えました。

翌日、長次郎と柴崎は挨拶とともに剱岳登山の協力を求めて、芦峅寺の総代・佐伯永丸を訪れました。剱岳のある立山連峰は、立山曼荼羅を信仰する立山修験の中心地であり、中でも剱岳は幾多の挑戦者を葬ってきた『死の山』として恐れられていました。佐伯は、「人手の手助けじゃ無理だが、登山のための資材の手配は協力する」と言ってくれました。それから7日間、柴崎は長次郎の案内で剱岳周辺の山を歩きながら、剱岳への登頂ルートを入念に探ります。

※朴訥で誠実な山男・長次郎役の香川照之さん、実に良い味をだしています。

火花散る陸軍測量部vs.日本山岳会

長次郎が考える登頂ルートは3つありました。一つ目は雄山から尾根伝いに剣沢へ降り、その後東面から取りつくルート、二つ目は剣御前から尾根伝いに登頂するルート、三つ目は室堂乗越から西面の尾根を伝って登頂するルートです。

しかしどのルートも、最後は絶壁に阻まれてしまいます――こればかりは避けることが出来ませんでした。

下見の最終日。柴崎たちは日本山岳会の一員である小島(仲村トオル)たちと出会います。スウェーデン製の天幕(テント)をはじめとした最新の登山道具を携えた日本山岳会――彼らもまた剣岳を登頂すべく、下見で来ていました。

「剣岳を登ることは余りにも危険な遊びだと思います」と言う柴崎に、小島は言い返します。「人から見たら遊びに見えるかもしれないが、私たちはあなた方より先に剣岳に登りますよ」

下見を終えて下山する途中、猛烈な吹雪に見舞われた柴崎と長次郎は、洞穴で念仏を唱えている行者を助けだします。長次郎に背負われて下山した行者は、二人に言いました――「剣岳に登るのであれば、雪を背負って登り、雪を背負って降りよ。これが生涯、修行を重ねてきた者に言い伝えられる言葉だ」

※陸軍測量部、日本山岳会、それぞれの登頂に対する真摯な思いが感じられます。

地図を作るということ

下見を終え、柴崎は長次郎と翌年の再会を約束して東京に戻りました。剱岳への挑戦はマスコミの知るところとなり、「陸軍」対「日本山岳会」という格好の図式で注目され始めています。

明治40年4月、柴崎は測夫の木山・生田(松田龍平)と共に早めに立山入りしました。長次郎もまた、荷物持ち人夫として宮本金作・岩本鶴次郎・山口久右衛門を手配し、標石作りのために木山を残して6人で入山しました。

深い雪の残る自然の厳しさに、柴崎達一行は改めて剱岳登頂の難しさを思い知ります。今回の登山では、合計27か所に三角点を設置する計画でした。若い生田は血気にはやり、剱岳登頂を急ごうとしますが、「俺たちの仕事は剣岳に登ることだけじゃない」と柴崎は諫めます。

測量開始から数日後、馬場島平から沢に沿って慎重に歩いていた一行を、突如雪崩が襲いました。幸運にも全員無事でしたが、三等経緯儀を抱えたまま埋もれた生田は改めて自然の厳しさを痛感します。

※ここで出てくる松田龍平演じる生田には、見ていてハラハラさせられます。

初登頂ではなかった剱岳

立山入りから2ヶ月後の6月――新川郡へ初めての三角点を設置した測量隊。その少し前に日本山岳会も立山に入山し、剱岳登頂を試みていましたが、やはり絶壁に阻まれてしまいます。

剣沢に向かって下山していた山岳会は、下方にいる測量隊に手旗信号で「ここから先は危険」と知らせました。それに触発された生田は、柴崎に頼みこみ剱岳登頂を試みます。しかし生田は足を踏み外し落下、命綱も切れ下まで落ちてしまいました。

命は助かったものの足を負傷ししてしまった生田。一行は一旦下山することにします。

生田を宿で治療に当たらせ、その後も黙々と仕事をこなしていく測量隊。山岳会リーダーの小島は、測量隊の仕事ぶりに尊敬の念を感じていました。

いよいよ残るは剱岳のみ――0柴崎は行者の言葉「雪を背負って登り、雪を背負って降りよ」の意味を理解し、三ノ沢の雪渓から登るルートを決意します。最後の難関である絶壁を、全員命綱で繋がり無事に登頂することに成功しました。

明治40年7月13日、ついに陸軍陸地測量部は剱岳山頂に、27番目の三角点を立てることができました。しかし山頂の岩間に、すでに行者の錫杖があったのです。そう、剱岳は前人未到ではなく、既に修験者によって登頂されていたのです。

柴崎からの急電を受けた陸軍上層部は、初登頂でなかったことに憤慨し、柴崎たちの功績を評価しませんでした。しかし柴崎は思います。「人は何をしたかではなく、何のためにしたかが大事なのだ」

※陸軍上層部の身勝手さに腹がたつシーン。この時代に、剱岳を登頂するということがどれだけ大変なことだったか。地図を作るためだけに過酷な山を切り開いていった名もなき測量士たちに心から感動します。雄大で美しい立山の景色も、この映画の見どころですよ。

劔岳 点の記の作品情報

劔岳 点の記のジャケット写真
レンタル開始日
2009/12/11
監督
木村大作
キャスト
浅野忠信 香川照之 松田龍平 モロ師岡
上映時間
140分
GEOで購入!
劔岳 点の記のユーザ評価

評価数:763件
評価 :★★★☆☆(3.6/5)

クチコユーザの評価・ネタバレ
  • 日本地図の完成のために、登頂するのにとても困難な劔岳の測量が残されていた。それをどのようにして成し遂げたかを知ることができ、とても感動しました。役者さんがとても大変ながらも頑張ってすばらしいです。
  • なぜ山に登れるのか。そこに道があるからだ。ヒートテックもなかった時代に、道を切り拓いた人々がいる。峻厳な雪山に、過剰な演出は無用。彼らの為した仕事を、淡々と記す。この地味さが、偉い。
  • 山って危険もいっぱいなんだねえ。 突然の裂け目、落石、なだれ。 命をかけての測量に情熱をかける男たちの話がかっこいい。 ライバルの前に仲間であるべきなんだよねえと、考えさせられるドラマだった。 あんなに競争して登山に挑戦したのに、登頂した時の発見物でのオチにはちょっとびっくり。 なかなか面白かった。 お勧め。

木村大作氏の監督作品「春を背負っても是非!」

映画「剱岳点の記」の監督・木村大作氏の監督作品第二弾「春を背負って」もおすすめです。この映画は奥秩父の山小屋を舞台としたヒューマンドラマです。 山で働く厳格な父に反発し、トレーダーとして都会で働いていた長嶺亨(松山ケンイチ)は、父の他界をキッカケに脱サラし山小屋を継ぐことにしました。都会と違う自然の中の生活、そこに集う人々。冬山の厳しさや、自然の美しさ、そこで成長していく亨たち。山岳小説家・笹本稜平著の同名小説を映画化した「春を背負って」は、自然の中で本来の人間性を取り戻していく物語です。見終わるころには、なんだか気持ちがほっこりしてきますよ。

春を背負っての作品情報

春を背負ってのジャケット写真
レンタル開始日
2014/12/17
監督
木村大作
キャスト
松山ケンイチ 蒼井優 檀ふみ 小林薫 豊川悦司
上映時間
116分
GEOで購入!
春を背負ってのユーザ評価

評価数:942件
評価 :★★★☆☆(3.5/5)

クチコユーザの評価・ネタバレ
  • 父が経営していた山小屋を継ぐことになり、そこで出会う色々な人たちと過ごし、色々な事を経験する事により、たくましく成長していく過程が、雄大な山の風景と共に描かれていて、とても良い作品でした。温かい気持ちになる、優しさに溢れた作品です。
  • 影像が綺麗やった、蒼井優がメッチャ可愛いかった。あそこまで高くなくてもいいけど山に登りたくなりました。それにしても蒼井優が可愛かった。檀ふみも世話〜ない。
  • 山を撮ることに関しては、「劒岳 点の記」と同様、大自然の素晴らしさを 感じさせる、さすがのうまさである。 今回は、この大自然を背景にして、家族のつながりや、人と人とのつながり をメインテーマとしたもので、悪天候の中で遭難に合う何人かの人物をキー にした、感動的な作品に仕上がっていた。 蒼井優さん、山ガールらしいショートカットがよくお似合いです。

参考URL
・youtube.com