怒りのジャケット写真

吉田修一の原作「怒り」を映画化した本作。ある殺人事件を起点に、東京・千葉・沖縄でそれぞれの人の思惑が交錯しながらクライマックスに向かっていきます。人間の心理を見事に突いたちょっと後味がほろ苦い作品。それでは気になるネタバレを最後までどうぞ!

監督:リ・サンイル[李相日]、原作:吉田修一、音楽:坂本龍一、出演:渡辺謙 森山未來 松山ケンイチ 綾野剛 広瀬すず 宮﨑あおい 妻夫木聡

ここからネタバレ!閲覧にはご注意ください!

豪華キャストによる話題作

この映画に出演されている俳優陣がすごいんです。ハラハラドキドキのメインキャストに若手実力派俳優、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛。そして脇を固めるのは、渡辺謙、宮崎あおい、妻夫木聡、広瀬すず、更に音楽は坂本龍一。これほどの豪華キャストで面白くならないわけがないですね。特に広瀬すずは、自らオーディションを受けてまで、この映画に出たかったというのですから、その思い入れの強さがうかがえます。

物語は、千葉・東京・沖縄で3つの物語が平行して進みます。小説を読まないで映画だけ見ると、最初は展開に戸惑いがあるかもしれませんが、徐々に話に引き込まれていきます。

そして最後に明かされる、それぞれの地で犯人と疑われる3人の本当の姿。そこには切なさと怒り、社会から忘れられている問題から生み出される悲しみが見えてきます。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=iMG1qVZ2dcs

始まりは八王子夫婦惨殺事件

ある夏の暑い日、八王子で夫婦惨殺事件が発生しました。夫婦の遺体は大量の血痕と共に風呂場で発見されますが、凶器と見られる包丁が落ちていた現場のドアには、血で大きく殴り書きされた「怒」という文字。

現場からは指紋も発見され、犯人は「山神一也」という男と判明しますが、その後1年経っても検挙に至りません。犯人が整形や女装など姿を変えて逃げ延びていると考えた警察は、予想できる現在の姿を指名手配写真に掲載し、テレビの特番などでも取り上げられました。

※ショッキングな映像から始まり、最初から否応なく何が起こったんだろう、犯人は誰?とストーリーに引き込まれていきます。

千葉:田代哲也と槙愛子の物語

千葉で漁師をしている槙洋平(渡辺謙)は家出をして数ヶ月経つ娘の愛子(宮崎あおい)を探して新宿・歌舞伎町に来ていました。やっと見つけた愛子は風俗店で働き、ボロボロに傷つき疲れ果てた姿になっていました。父洋平は、そんな娘の姿に怒るどころか痛ましさを感じ、千葉の実家へと連れ帰ります。

愛子がいない数ヶ月の間に、父親の職場では田代哲也(松山ケンイチ)という流れ者の男が働き始めていました。無口ながらも真面目によく働く田代に、愛子は徐々に惹かれていきます。そしていつしか、二人は愛し合うようになり、得体がしれないと思われた田代は、愛子にだけは自分の生い立ちを話すようになりました。

しかし、どこか田代を信用しきれない父洋平は、二人の仲に不安を感じていました。そしてある日ニュースを見た洋平は、「もしかしたら田代は殺人犯・山神では?」と疑念を持ちます。

※父子家庭であるがゆえに、娘愛子を慈しみながらも心配し苦悩する父親を演じる渡辺謙、そして少し知的障害が疑われる愛子を宮崎あおいが見事に演じています。

東京:藤田優馬と大西直人の物語

東京・新宿のゲイが集まる出会い系クラブにやってきた藤田優馬(妻夫木聡)は、一人で膝を抱えている男・大西直人(綾野剛)を見つけます。犯すように直人と関係を持った優馬は、行き場所のない直人をそのまま自宅に連れ帰り、そのまま住まわせることにしました。

持ち物もほとんどなく、寡黙ながらも控えめで心優しい直人に優馬は惹かれていきます。そして末期癌でホスピスに入院している母親に直人を紹介します。仕事をしていなかった直人は昼間、優馬の母親の元を訪れ、寝たきりの母親の話し相手を務めてくれました。しかしそれも空しく母親が亡くなります。

ある日の仕事帰り、優馬は直人がカフェ一人の女性と楽しそうに談笑する姿を見かけます。直人に疑いを持ち始める優馬、そんな時警察から連絡が入り、内容を聞かないまま優馬は直人が殺人犯・山神では?と疑い始めます。

※見ているだけで切なくなるような直人、そして最後で明かされる彼の生い立ちに号泣する優馬。切ない怒りを感じてしまいます。

沖縄:田中信吾と小宮山泉の物語

母親の都合で、沖縄に移住してきた高校1年の小宮山泉(広瀬すず)は、地元の同級生・知念辰哉(佐久本宝)と無人島に遊びに来ていました。そこで謎のバックパッカー田中信吾(森山未來)と出会います。田中から「ここにいることを誰にも言わないでほしい」と頼まれた泉は、田中を存在を秘密にします。

ある日、辰哉と映画デートで沖縄本島に来ていた泉は、商店街を歩く田中を見かけます。そして3人で居酒屋に入り、飲みなれない泡盛で酔いつぶれてしまう辰哉。最終フェリーの時間が迫り、田中に別れを告げて泉と辰哉はフェリー乗り場に向かいますが、途中辰哉とはぐれてしまいます。辰哉を探し歩く泉、突然口をふさがれ、米兵に襲いかかられた泉はレイプされてしまいます。

そして辰哉の実家である民宿で働き始める田中、彼の隠れた異常な行動に辰哉は疑念を抱き始めます。

※森山未來の見事な怪演ぶり、広瀬すずの体当たり演技に加えて、この映画が初出演という知念辰哉役の佐久本宝の素朴な演技に、思わず涙してしまいます。

そして、クライマックスへ

【千葉】田代に対する不信が募ってきた洋平は、愛子に「田代は山神ではないか?」と疑いを伝えてしまいます。否定する愛子、しかし疑念をぬぐい切れない愛子は警察に通報してしまいました。警察が調べた結果、指紋から田代は山神ではないことがわかり、愛子は疑ったことを後悔し半狂乱になります。そして行方がわからなくなっていた田代から一本の電話、愛子は田代を迎えに東京駅に行きました。

【東京】行方不明になった直人に対して疑いを濃くする優馬。そんな時、いつか直人と喫茶店で談笑していた女性を見かけます。思わず優馬は彼女に声をかけ、直人が彼女と施設で兄弟のように育ったこと、そして幼い頃より心臓が弱かった直人が、優馬の家の近くで倒れているのが発見され、そのまま亡くなっていたことを知ります。山神ではなかった直人、彼を信じ切れなかった優馬は大切な人を失った悲しみに涙しながら立ち去りました。

【沖縄】辰哉の民宿で突然暴れ、民宿をめちゃくちゃにして田中が行方をくらましました。田中が無人島にいると見当をつけ、島にやってきた辰哉がみたものは、自分の顔をハサミで傷つけている異様な田中。そして廃墟の壁には、大きく「怒」の文字が・・・。そう、八王子夫婦惨殺事件の犯人・山神は田中だったのです。それを見られた田中は、辰哉につかみかかり、泉の強姦事件の際に陰で笑いながら見ていたと告げます。田中に裏切られ泉を傷つけられたと感じた辰哉は、思わずハサミを取って田中の腹に突き刺してしまいました。

※最後明かされる犯人・山神の犯行動機、そのあまりにも身勝手で安易な動機。そして山神と疑われた田代と直人の人目を忍んで生きてきた悲しい過去。モヤモヤと割り切れない思いが残る中、田代と愛子の抱擁が少し心をほっとさせてくれます。

怒りの作品情報

怒りのジャケット写真
レンタル開始日
2017/04/05
監督
リ・サンイル[李相日]
キャスト
渡辺謙 森山未來 松山ケンイチ
上映時間
142分
GEOで購入!
怒りのユーザ評価

評価数:3742件
評価 :★★★☆☆(3.9/5)

クチコユーザの評価・ネタバレ
  • 未だかつて出会ったことのないミステリーサスペンス。夫妻惨殺の殺人犯が三人の登場人物のいずれかかをひたすら疑い続ける二時間弱。犯人にだけ焦点を当てるのではなく、それぞれの登場人物に綿密に用意された背景も本当に見ごたえがあり没入できる。ラスト15分間のクライマックスは凄まじい。一見の価値あり。
  • 過去に世を騒がせた、あの殺人事件が元になっているようです。悲惨な殺人現場から映画は始まり、無関係だったそれぞれの生活が、次第に事件を中心に変化していく人間ドラマですが、実際にすぐそこで起きうる事であり、見終えた後もずっと心を揺さぶられました。それにしても、宮崎あおいの演技がすごい!圧倒されます。
  • 広瀬すずちゃんの演技が圧巻で見てしばらくたつけれども余韻が残ってる。妻夫木聡も宮崎あおいも今までの印象を覆す演技で良かった。 もう一度見たいなと思えるほどそれぞれの役者さんに魅了させられました〜

吉田修一原作の「悪人」もオススメ!

2010年公開の「悪人」は、「怒り」の原作者・吉田修一氏と監督・李相日氏のコンビによる映画です。第34回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞に輝き、5部門で最優秀賞を受賞した評価の高い映画です。 吉田修一氏の小説は、人間の負の部分をあぶり出すように、丁寧に描かれた社会派小説です。その原作に忠実に最高の俳優陣で描き出す李監督の演出も見事ですが、この映画で新境地を開拓した妻夫木さん、そして当時新鋭だった岡田将生さんや満島ひかりさん、そして年下の男を愛し守ろうとする光代役の深津絵里さんの演技も見ごたえがあります。

悪人の作品情報

悪人のジャケット写真
レンタル開始日
2011/03/04
監督
リ・サンイル[李相日]
キャスト
妻夫木聡 深津絵里 岡田将生
上映時間
139分
GEOで購入!
悪人のユーザ評価

評価数:1592件
評価 :★★★☆☆(3.6/5)

クチコユーザの評価・ネタバレ
  • 本当の悪人とは…深く考えさせられる作品でした。人を殺めてしまうことか…人を傷つけてもそれは悪にならないのか…。けれど、世の中の悪に対しての線引きが悲しいほどハッキリしているなと感じました。被害者の父親役の柄本明さん、加害者の祖母役の樹木希林さんの表情一つ一つに胸が痛みました。 そしてこれは深津絵里さんなしでは絶対に成り立たない映画です!彼女の勇気や愛や優しさに涙が止まりませんでした。
  • たいせつな人がいることで、人は強くなれる。たいせつな人を想う心のたいせつさを、観る人の心の奥深くに、じんわりと強く訴えかけてくる、とても素敵な作品です。
  • 飢えが「悪人」を生みだすのか。猛烈な飢餓感に襲われて罪を犯した人は「悪人」だろうか。また、その飢えが満たされたとき、「悪人」は「悪人」のままでいられるのだろうか。腹を空かした潜在的な「悪人」達を前にして、愚問ばかりが浮かぶ。

参考URL
・youtube.com